コロナ流行中の今だからこそ知っておきたい「退職代行を利用したときの失業保険」
新型コロナウイルスの流行は収まる様子がなく、景気は低迷する一方です。ひとまず勤め先は辞められるとしても、求人の数が減っている現状「再就職までお金の問題をどうするか」という不安を抱えざるを得ません。
当面のお金の問題に関して、まず最優先で検討すべきなのは「失業保険」です。本記事では、失業者に有利なコロナ流行中の特別措置についても解説します。
そもそも失業保険とは?
失業保険(失業手当とも。正しくは”求職者給付”)とは、雇用保険に加入している労働者が職を失った時に、収入の一部を一定期間に渡って給付する制度です。
雇用保険の加入に関しては、勤め先と「31日以上の雇用見込み」かつ「週20時間以上」の雇用契約を交わした時に、事業者が手続きをしなければならないとされています。通常、正社員として働いているのであれば、上記の要件は満たしているでしょう。
自分が雇用保険に加入しているかどうかは、最寄りのハローワークで身分証を提示すれば確認できます。
失業保険の給付条件
失業保険の給付にあたっては、下記の基本的な給付条件を満たす必要があります。
【失業保険の給付条件】
- 失業した時点で雇用保険に加入していること
- 雇用保険の加入期間(被保険者期間)が、原則として退職前2年間に12か月以上あること※
- 積極的に就職しようとする意志と、いつでも就職できる能力(健康や環境)があり、実際に仕事を探していること
※被保険者期間は、働いた日数が11日以上ある月を1か月と数えます。また「特定理由離職者」あるいは「特定受給資格者」に区分される人は、給付に最低限必要な被保険者期間が短縮されます(詳細は後述)。
離職者の区分による違い
失業保険を受給できる離職者は、離職理由に基づいて「自己都合退職」と「会社都合退職」(特定受給資格者)の2つに大きく区分されています。
【自己都合退職・会社都合退職とは?】
自己都合退職とは:自分の意思で会社を辞めた人
会社都合退職とは:解雇・雇止めなどに遭った人
上記の離職者の区分は「離職票」の記載内容に基づいて行われます。離職票の交付は勤務先がやってくれますが、退職代行を利用した場合は交付手続きしてくれない可能性があるため、代行業者に「離職票の交付」を伝言してもらうようにしておかなければなりません。
本題に戻ると、退職者の区分ごとの違いは下記2つです。
①給付開始までの待期期間(給付制限期間)
「自己都合退職」の場合、3か月の給付制限期間が終わってからでないと、失業手当はもらえません。一方「会社都合退職」は、待期期間なしで失業後すぐ給付を開始してもらえます。
②最低限必要な被保険者期間
「自己都合退職」は、雇用保険の被保険者期間が”退職前2年間に12か月以上ある”ことが給付資格になります。一方「会社都合退職」は、被保険者期間が”退職前1年間に6か月以上ある”状況なら、問題なく給付資格を得られます。
「自己都合退職」でも会社都合退職と同じ扱いにしてもらえることがある
自分の意思で会社を辞めた場合でも、その詳しい理由しだいでは、給付資格を会社都合退職と同じように扱ってもらえます。このように特別な扱いを受ける自己都合退職者を「特定理由離職者」と呼び、以下のような条件に当てはまる人が対象とされています。
【特定理由離職者の範囲】
- 雇用期間が満了し、希望したにもかかわらず契約更新されなかった人
- 体力の不足、心身の障害、疾病・負傷などが原因で離職した人
- 妊娠、出産、育児等により離職し、雇用保険法第 20 条第 1 項の受給期間延長措置を受けた人
- 父母に死亡・疾病・負傷などがあって介護する必要がある人や、父母を扶養するために離職した人
- 何らかの事情で単身赴任が困難になって、配偶者や扶養家族の元に帰る必要がある人
- 結婚や育児に伴って、通勤が難しくなった人
また、自己都合退職ではなく「実質的に会社都合退職だった」とみなされる場合もあります。セクハラ・パワハラ・過重労働が原因で退職し、それを証明できるものを持っている人です。
いずれにしても、自己都合退職として扱われそうな人は、一度ハローワークに相談してみるべきです。
退職代行利用時は「自己都合退職」に
自分で辞表を提出することが出来ず、退職代行を利用して会社を辞めた場合でも、失業保険の受給は可能です。
なお、代行業者を利用した場合は「自己都合退職」になりますが、心療内科で「適応障害」などと診断を受けている人は、特定理由離職者として扱ってもらえる可能性があります。
失業保険の給付額・給付期間
失業保険の給付額(基本手当)は、1日あたり退職前6か月間の平均賃金の50%~80%(※60歳未満の人の場合)です。平均賃金に対する給付額の割合は、収入が低いほど増えます。
ただし、下記のように年齢ごとの上限額もあります。
【失業保険の給付上限額】
30歳未満:6,750円/1日
30歳~44歳:7,495円/1日
45歳~59歳:8,250円/1日
60歳~64歳:7,083円/1日
また、給付日数は勤続年数と退職者の区分に応じて90日~330日の間で決定します(障害のある就職困難者の場合は150日~360日)。
受給期間は原則として離職翌日から1年間であり、支給開始が遅れれば遅れるほど給付日数をムダにしてしまいます。ただし、もしも「妊娠やケガが理由ですぐに働くことができない」といった事情がある場合、最長3年間まで延長できます。
新型コロナウイルスの流行に伴う特別措置
コロナ流行中の特別対応として、失業保険には次のような措置が行われています。
給付日数の延長に関する特例
現在失業保険の給付を受けている人を対象に、給付日数を60日間(年齢・所定日数によっては30日間)延長する制度です。
離職日が2020年4月8日以降の人に関しては「特定受給資格者」もしくは「特定理由離職者」という条件がありますが、再就職が難しい社会情勢下では有意義です。
基礎疾患がある人を「特定受給資格者」として扱う特例
自己都合退職でも会社都合退職と同じ待遇になる「特定受給資格者」の範囲に、2020年5月1日から「基礎疾患がある人」が含まれるようになりました。
基礎疾患とは、糖尿病・心不全・呼吸器疾患などを指します。その他にも、透析を受けている人や、免疫抑制剤を使用している人なども含みます。
求職活動実績の基準不適用措置
2020年3月10日から9月30日までの間、失業保険の受給継続に欠かせない「求職活動実績」を必ずしも作らなくてもよいとする運用が行われています。
この措置は、状況を見て期間が延長される可能性があります・
まとめ
雇用保険について所定の実績があれば、退職代行を利用しても失業保険は受けられます。セクハラ・パワハラ・過労・疾病などが原因で辞める場合は、待期期間なしですぐ受給が開始される場合もあります。
「どうせ自己都合退職だから」と諦めず、ハローワークに相談してみましょう。
経験のある退職代行業者は、依頼する際に「代行の際にこんな書類を交付してもらうよう伝言しておきましょうか?」と提案してくれます。口コミやランキングサイトもチェックしてみて、いい業者を選びましょう。